職場の合理的配慮は、対話から。備品の置き場を決めた具体例
職場で困っていることがあっても、周りに負担をかけるのではないかと考えて、相談をためらうことがあります。合理的配慮を考えるとき、出発点になるのは、本人と職場が困りごとを共有し、一緒に方法を考える対話です。一人の困りごとをきっかけに、ほかの従業員も感じていた不便さが見つかり、職場の改善につながることもあります。
合理的配慮は、一人ひとりの困りごとから考えます
職場での合理的配慮は、障害のある人が働くうえで支障となっている事情を改善し、働く機会や待遇を確保したり、能力を発揮しやすくしたりするための対応です。同じ障害があっても、困る場面や助けになる方法は人によって違うため、その人と実際の仕事の状況に合わせて考えていきます。
本人にも、周りで働く人にも、それぞれの権利や事情があり、すべての要望に希望どおり応えることが難しい場合もあります。ただ、希望した方法が難しくても、何に困っているのか、どうなれば仕事を進められるのかを確かめることで、別の方法を一緒に探せます。
政府広報オンラインでも、合理的配慮を提供する際には、双方が対話を重ね、共に解決策を検討することが重要だと説明しています。
※雇用分野では、障害者雇用促進法に基づく合理的配慮の提供が2016年4月1日から義務となっており、障害者差別解消法による2024年4月の事業者への義務化とは区別されます。
備品の置き場を決めた、職場での具体例
ある職場で、仕事に必要な備品がいつもの場所になく、パニックになってしまった人がいました。その人にとっては、必要なものが見つからないことが、仕事を進めるうえで大きな支障になっていたのです。

ところが、備品の置き場を確認すると、そこは正式に決められた場所ではありませんでした。いつも置かれていたために置き場だと思われていたものの、職場全体で定位置として共有されてはいなかったのです。対話を通じて、ほかの従業員も、備品が見つからず困ることがあったと分かりました。
そこで、備品の定位置を決め、置き場にラベルを貼りました。どこに置くのかが分かるようになり、必要な備品を探す時間がなくなりました。さらに、整理整頓への意識も高まり、職場全体の業務効率化につながりました。

この例では、一人が困っていたことをきっかけに、置き場が曖昧だったという職場の課題が見つかりました。本人が安心して仕事に取り組める環境を考えたことが、周りの人にとっても使いやすい仕組みにつながったのです。
難しい要望も、目的を共有して別の方法を探します
もちろん、合理的配慮を考える過程では、費用や時間、仕事の進め方を調整する負担が生じることもあります。職場では、事業への影響、実現のしやすさ、費用、企業の規模や財務状況、公的支援の有無などを総合的に見て、「過重な負担」に当たるかを個別に判断します。
大切なのは、要望を受けてすぐに難しいと結論づけず、本人が困っている場面と、職場が対応しにくい理由を伝え合うことです。希望する方法が難しいときも、理由を説明し、同じ困りごとを解消できる別の方法を話し合っていきます。対応を始めたあとも、実際に困りごとが減ったか、無理なく続けられるかを本人と確認します。そのあと、必要に応じて方法を見直します。
備品の例のように、職場全体が便利になることは、改善によって得られる効果の一つです。
働くことへの不安は、困る場面から整理してみましょう
これから働こうと考えている方やご家族にとって、どこまで配慮をお願いできるのかは、気になることだと思います。相談に向けては、どんな場面で困るのか、仕事にどう影響するのか、これまで助けになった工夫はあるかを整理してみると、相手に伝えやすくなります。具体的な方法が思いつかない場合は、まず、どんな場面で困っているのかを一緒に整理してみましょう。
合理的配慮を考えることには、調整の難しさもありますが、働きやすい環境を一緒につくるきっかけにもなります。一人で答えを出そうとせず、対話を通じて、自分に合う働き方を考えていきましょう。働くことや職場での配慮に不安がある方は、就労移行支援事業所、IFキャリアステーション荒川の相談・見学で、今気になっていることを話してみませんか。
参考資料
政府広報オンライン「事業者による障害のある人への『合理的配慮の提供』が義務化」
厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」

