できることをあえてやらない働き方|就労移行支援で考える余力の残し方

障害や体調の変化があって、これからの働き方に迷っている方、そのご家族や支援者の方に向けた記事です。

働き始めるときや訓練に取り組むとき、「できることは全部やらないといけない」と感じる方は少なくありません。けれども、できることをあえて全部はやらず、少し残しておくことも大事だと私たちは考えています。力を残しておくと、後で選べることが増え、それが心の余裕にもつながるからです。

この記事では、そう考えるきっかけになった投稿を紹介したうえで、訓練や仕事の場面での具体例と、就労移行支援でその力の配分をどう一緒に考えていくかをお伝えします。

AIの開発者が「できるのにやらなかった」と話した投稿

最近、AIモデル「Jev」の開発に関わるDiogo Almeidaさんの投稿を読みました。

投稿によると、Jevは以前から画像も扱える仕組みを持っていました。それでも、画像など文章以外の形式を扱わせると賢さが落ちやすいため、あえてその機能を無効にしていたそうです。また、長い文章を一度に読み込む力も、もともと公開していた範囲より大きかったといいます。これもできなかったから制限していたのではなく、良い使い方をするうえでは必要ないと考えて制限していた、と説明されていました。最初の公開では安定して動くことを優先した、とも書かれています。

AIの話ですが、「できることを全部出すのではなく、目的に合わせて出す範囲を選ぶ」という考え方は、働き方にもそのまま当てはまると感じました。

「あえてやらない」とは、力を残しておく選び方

ここでいう「あえてやらない」とは、やろうと思えばできることを、自分で考えたうえで今は選ばないことです。できないから諦めることとも、やる気がなくて手を止めることとも違います。

余力があると、後で選べることが増える

一日の力を午前中で使い切ると、午後に急な作業や相談が入ったときに対応する力が残っていません。翌日にも疲れが残り、予定していたことを変えざるを得なくなることもあります。

反対に、少し力を残して一日を終えると、急な作業に応じるか、予定どおり進めるか、早めに休むかを、その時の状況を見て選べます。無理をすればできることを、あえてやらずに残しておく。そうすることで、後で選べる道が増えていきます。

残しておいた力が、心の余裕になる

「いざとなったら、まだ動ける」と分かっていると、目の前の作業に追い立てられる感じが和らぎます。余裕がある時のほうが、周りに質問したり、困っていることを伝えたりもしやすくなります。

いつも限界まで力を出していると、少しの予定変更でも崩れてしまいそうな不安がつきまといます。力を残しておくことは、気持ちを落ち着けて働き続けるための準備でもあります。

訓練や仕事の場面での「あえてやらない」例

具体的にはどのような場面で使えるのか、訓練や仕事でよくある例を挙げます。

全力を出し切らず、余力を残して終える

作業がはかどっている時ほど、「このまま終わるまでやってしまおう」と思いがちです。そこで、決めていた時間や量に達したら一度手を止めます。「もう少しできる」くらいで終えると、翌日も同じペースで取り組めます。

頼まれたことを、全部は引き受けない

同僚からファイルを差し出され、手を挙げて穏やかに今の作業を先に終えたいと伝える男性

頼まれた作業を全部引き受けると、その時は役に立てた気持ちになれます。ただ、抱えた量が自分の力を超えると、どれも中途半端になったり、後で体調を崩したりします。引き受ける前に、今抱えている作業と期限を確認し、難しいときは「今日はここまでなら対応できます」「これを先に終えてからでもよいですか」と相談します。

疲れる前に休憩を取る

疲れる前に、窓際のテーブルでお茶を飲みながら休憩する男性

疲れを感じてから休むと、回復に時間がかかります。休憩の時間をあらかじめ決めておき、作業の切りの良いところで、疲れを感じる前に休みます。休憩を先に取ることで、後半の作業の質も保ちやすくなります。

調子の良い日に、ペースを上げすぎない

体調の良い日は、つい普段より多く取り組みたくなります。しかし調子の良い日に頑張りすぎると、その反動で次の日に動けなくなることがあります。調子の良い日も普段と同じペースを目安にして、余った力は残しておきます。

「あえてやらない」と「避ける」は違います

「無理をしない」と聞くと、苦手なことから逃げるように感じる方もいるかもしれません。ここでお伝えしている「あえてやらない」は、新しいことに挑戦しないことや、我慢して何も言わずにいることとは違います。

大切なのは、自分の状態や作業の目的を見て、どこに力を使い、どこで止めるかを自分で決めることです。そして、止める理由や調整したいことは、周りに言葉で伝えます。職場で必要な配慮を相談するときの考え方は、職場の合理的配慮についての記事でも紹介しています。

就労移行支援で、自分に合う力の配分を一緒に考える

就労移行支援は、障害のある方が一般の職場で働くことを目指して、働くための準備をする福祉サービスです。詳しくは就労移行支援についてのページをご覧ください。

どのくらい力を残せばよいかは、人によっても、その日の体調によっても変わります。頭では分かっていても、一人で見極めるのは難しいものです。

就労移行支援では、訓練の中で実際に作業に取り組みながら、スタッフと一緒に次のようなことを確認できるかもしれません。

  • どのくらいの時間や量で疲れが出てくるか
  • 休憩をどのタイミングで取ると、後半も集中が続くか
  • 作業を頼まれたとき、どこまでなら引き受けられるか
  • 調整したいことを、どんな言葉で周りに伝えるか

うまくいった日もそうでなかった日も振り返り、自分に合うペースを少しずつ探していきます。こうして見つけた力の配分は、実際に働き始めてからも、自分の状態を確かめて調整するための目安になります。

相談・見学のご案内

「頑張りすぎて体調を崩すことが多い」「自分に合うペースが分からない」と感じている方は、まずは相談や見学で、今の働き方や体調のことをお聞かせください。ご家族や支援者の方からのご相談も受け付けています。

見学では実際の訓練の内容をご案内いたします。気になっていることがあれば、その場でお気軽にお尋ねください。お問い合わせは、相談・見学のお申し込みフォームからどうぞ。

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