就労移行支援で考える働き方|「今できること」から目標を選び直す
就労移行支援を通じて自分に合う働き方を考えるとき、出発点にしたいのは「今の自分に何ができるか」です。以前の仕事や体力を基準にすると、今の状態との違いに戸惑うこともあると思います。これまでの経験を参考にしながら、今の体調や使える方法を確かめ、次にどう動くかを決めていきましょう。
この考え方は、障害や体調の変化があるときに限りません。仕事でも日々の暮らしでも、経験が増えたり、体力が変わったりすれば、できることは変わります。大切にしたい方向は保ちながら、その時の状況に合わせて、目標を柔軟に見直してよいのだと思います。
使える方法が変われば、仕事の基準も変わります
ゲーム制作者の堀井雄二氏は、Xへの投稿で、かつて『ポートピア連続殺人事件』を作った際には、物語、絵、プログラムを自分で手がけたと振り返っています。そのうえで、今はAIを使うことで、絵を描いたりプログラムしたりしなくても、一人でゲームを作れることへの驚きを述べています。
また、プログラミングについて発信するlauren氏は、AIエージェントがコードを書く状況を踏まえ、「良いコード」の基準を更新する必要があるという考えを示しています。人が保守することを前提にした基準も、作り方が変われば見直すべきではないか、という主張です。
この二つの投稿を読んで、過去のやり方を基準にするだけでなく、今何ができるのかを確かめて、次の目標を決めることが大切だと感じました。使える道具が変われば、取り組める仕事や方法も変わります。以前は難しかったことに、別の方法で取り組める場合もあるのです。
過去の自分を、今の働き方の唯一の基準にしない
「前はもっと長く働けた」「この仕事を一人で進められた」という記憶は、自分の経験を知るうえで大切です。ただ、その頃と今とでは、体調、体力、生活の状況、周囲の環境が同じとは限りません。
たとえば、以前と同じ時間を働くのが難しくても、これまでの経験を使って、作業の手順を説明したり、確認すべき点に気づいたりすることはできるかもしれません。反対に、慣れている仕事でも、今は集中を続けにくく、途中で休むほうがよい場合もあります。
過去の経験は、得意なことや自分に合う方法を探す手がかりとして使いましょう。今の働き方を決める際には、現在できること、負担が大きいこと、助けになる工夫も合わせて見ていきます。
「以前と同じように働く」という目標が今の状態に合わないなら、「働き続ける」という行動指針はそのままに、目標のほうを置き換えてみましょう。たとえば「休憩を取りながら作業を続ける」「負担が大きくなる前に相談する」といった目標です。行動指針に沿った目標は、今の自分に合わせて選び直せます。
「今できること」は、条件も含めて整理しましょう
できることを考えるときは、「できる・できない」の二つに分けるだけでなく、どんな条件なら取り組めるかも確かめます。同じ作業でも、時間帯、作業量、説明の受け方によって、取り組みやすさが違うことがあります。

取り組める作業と、助けになる方法を書き出す
たとえば、次のような点を見てみましょう。
- 一人で進められる作業は何か。
- 手順をメモで確認したり、途中で質問したりすれば進められる作業は何か。
- どんな作業や場面で疲れや困りごとが出るか。
- 休憩や作業量の調整によって、取り組みやすさは変わるか。
得意なことだけを探す必要はありません。「説明を一度で覚えるのは難しいけれど、メモを見れば進められる」のように、助けになる方法と一緒に整理してみましょう。「できない」と思っていた作業にも、試せる方法が見つかるかもしれません。
一日の結果だけで決めず、変化を見ていく
体調に波がある場合は、よくできた日にも、難しかった日にも目を向けます。作業した内容と、その時の体調、疲れ方、助けになった工夫を簡単に残しておくと、あとから振り返る手がかりになります。
調子のよい日にできた量を毎日の基準にすると、無理が出るかもしれません。一方で、つらかった一日だけを見て、今後もずっと難しいと決める必要もありません。いくつかの場面を振り返りながら、続けるための条件を考えていきましょう。
就労移行支援への相談で、今の自分から働き方を考える
働きたい気持ちはあっても、自分に合う仕事や無理のない進め方が分からないときは、就労移行支援への相談を考えてみてください。相談では、希望する仕事に加えて、今取り組めること、困る場面、これまで役立った工夫を伝えてみましょう。
「どの仕事に就くか」をすぐに決めようとせず、まずは支援者と一緒に今の状況を整理するところから始めます。そのうえで、何を試してみたいか、どんな方法なら取り組めそうかを話し合っていきましょう。
作業を試したあとは、できた量だけでなく、途中の困りごとや終えたあとの疲れ方も振り返ります。負担が大きかったなら、作業の進め方や量を見直す。余裕が出てきたなら、次に取り組む内容を考える。そうして、実際の経験をもとに働き方を組み直していきます。
ご家族や支援する方も、以前できていたことに加えて、今どんな場面で取り組めているか、何が負担になっているかを本人と確かめてみてください。本人の希望と現在の状況を一緒に見ることが、次の行動を話し合う出発点になります。
行動指針は保ち、目標を今の自分に合わせる

行動指針とは、「何を大切にして働き、暮らしたいか」という方向です。「働き続ける」のように、達成して終わるものではなく、向かい続けるものです。一方、目標はその方向へ進むための具体的な区切りです。「困ったら早めに相談する」「休憩を取りながら続ける」「慣れてきた作業を少し広げる」など、今の自分が実際に取れる行動として決めていきましょう。
経験を重ねて取り組めることが増えたときも、体力や体調が変わって負担が大きくなったときも、目標は見直せます。行動指針は持ち続けながら、そこへ向かう目標は柔軟に変えていく。この考え方は、どの仕事にも、仕事以外の暮らしにもつながります。
今の自分に合う働き方を一人で決めるのが難しいときは、就労移行支援事業所、IFキャリアステーション荒川の相談・見学で、気になっていることを話してみませんか。「以前はできていたこと」と「今困っていること」の両方を、相談の出発点にしてみてください。

