自分のことが分からないときこそ伴走を|AI時代の学び方と就労移行支援
AIが身近になり、分からないことはすぐに質問できる時代になりました。学び方も働き方も、数年前とは大きく変わっています。この記事では、AIの影響で本業が大きく揺らいだことを率直に語った、ある教育者の投稿を手がかりに、これからの学び方と、自分の状態をくみ取ってくれる伴走の大切さを考えます。
「今年、講座の売上が激減した」
Kent C. Dodds(ケント・C・ドッズ)氏は、Webサイトやアプリを作る開発者向けに、オンライン講座を長年作ってきた教育者です。「Epic Web」や「Testing JavaScript」といった講座で知られています。
Dodds氏は2026年10月24日、X(旧Twitter)にこう投稿しました。
「教育は永遠に変わった。エージェント(AIの助手)に話しかけるだけで、どんな質問にも、自分のプロジェクトの事情まで踏まえて答えてもらえるなら、人は講座を買わずにエージェントに聞く。だから今年、私の講座の売上は激減した。」
長年続けてきた本業が、AIによって崩れたことを隠さずに書いています。続けて、こうも書いていました。
「怒ってはいない。大丈夫だ。今も世の中に価値を届け、家族を養うための一番いい方法を探しているところだ。」
方向は変えずに、やり方を組み直す
Dodds氏は、「もう教育はいらない時代になったのか」という問いも立てています。答えは「そうではない」でした。
「人が、より満足して生き、やりたいことをし、価値を生み出すために、学びたいこと、学ぶ必要があることは常にある。問題は、何を学べば本当に長く役立つのかだ。」
Dodds氏が変えていないのは、「学びを通して価値を届ける」という方向です。変えようとしているのは、届け方です。
教える側には、昔からの難題がありました。受講する人によって、経験も、大事にしていることも、置かれている事情も違います。同じ教材を、誰にとっても同じように役立つものにするのは、とても難しいことです。Dodds氏はかつて、早く進んだ人のために追加の課題を用意して、この差を埋めようとしていたそうです。
今は、受講する人が普段使っているAIの助手を活用し、その人の今のやり方に合わせた課題を出す形に切り替えようとしています。
売上が落ちたことを嘆いて止まるのではなく、方向は保ったまま、今の状況に合ったやり方を組み直している。その姿勢が、この投稿から伝わってきます。
自分のことを、自分で正確に分かっているとは限らない

学びを一人ひとりに合わせる。これは、これからの教育にとって大切な考え方です。ただ、ここでもう一歩考えてみたいことがあります。
一人ひとりに合わせるには、その人がどんな状態で、何に困っているのかを知る必要があります。けれども私たちは、自分のことをいつも正確に分かっているわけではありません。
- 何が分からないのかが、分からない
- 疲れているのに、そのことに気づいていない
- 本当は苦手なのに、「できます」と答えてしまう
- 困っていることを、うまく言葉にできない
こうしたことは、誰にでもあります。体調に波がある時期や、新しい環境に慣れようとしている時期には、なおさらです。
AIの助手は、聞かれたことには上手に答えてくれます。けれども、本人が言葉にしていない疲れや迷いまでくみ取るのは簡単ではありません。表情や様子、日々の記録の変化から「最近、少し無理をしていませんか」と気づいて声をかける。そうした、相手の状態をくみ取る関わりは、AIが広がる今も、これから先も必要とされる力だと私たちは考えています。
就労移行支援は「状態をくみ取り、一緒に組み直す」場所

就労移行支援は、障害や病気のある方が、働くための準備を進める場所です。パソコンなどのスキルを身につけるだけでなく、利用者さん一人ひとりの状態をくみ取りながら、その人に合った学び方や働き方を一緒に考えていきます。
状態をくみ取る
- 毎日の通所や作業の様子、体調の記録を一緒に見ていく
- 本人が気づいていない変化に気づいたら、声をかけて確かめる
- 「うまく言えないけれど、なんとなくつらい」という段階から相談できる
一緒に組み直す
- 今の体調やペースに合わせて、通所日数や作業量を調整する
- 得意なことを生かせる学び方を、試しながら探す
- うまくいかなかったときは、責めずに、やり方を一緒に組み直す
Dodds氏が受講する人それぞれの事情に合わせようとしているように、就労移行支援でも、一人ひとりの今に合わせることを大切にしています。そのうえで、本人がまだ言葉にできていない部分を、周りの人がくみ取っていく。そこに、人が伴走する意味があります。
今までのやり方が通じなくなっても
時代が変わったり、体調や環境が変わったりして、今までのやり方が通用しなくなることがあります。そんなときも、自分が大切にしたい方向まで手放す必要はありません。今の自分に合ったペースと形で、学び方や働き方を組み直せばいいのです。
そして、自分のことがうまく分からないときは、一人で答えを出そうとしなくてかまいません。それをくみ取ってくれる人と一緒に、進んでいけばいいのです。
IFキャリアステーション荒川について
IFキャリアステーション荒川は、IT分野に特化した就労移行支援事業所です。精神障害や発達障害のある方を対象に、パソコンやITのスキルを身につけながら、働くための準備を進めています。
- 場所:西日暮里駅から徒歩5分
- プログラム:10時〜15時
「自分に何が合っているのか分からない」「困っていることをうまく説明できない」という方も、そのままで大丈夫です。まずは見学や相談で、今の状態を一緒に整理するところから始めましょう。

