少しずつ広げる働き方|就労移行支援で考える「ペース配分」
働き始めるときや訓練に通い始めるとき、「早く毎日通えるようにならなければ」と焦ることがあります。この記事では、ある開発者が新しいツールを公開した進め方を手がかりに、向かう方向は保ったまま、その時の状態に合わせて少しずつ広げていく考え方を紹介します。
5万人が待っていても、一度には出さない
Mitchell Hashimoto(ミッチェル・ハシモト)氏は、開発者向けのソフトウェア会社HashiCorpを共同で創業した人です。今は新しい会社Superlogicalで、「Rex」というターミナル(コマンドを入力して使う画面)のツールを作っています。
Rexは2026年10月5日に、一般の利用者を招いたテストを始めました。会社の発表によると、それまでに約50人の小さなテストを行い、開発チーム自身も数か月、毎日の仕事でRexを使ってきたそうです。品質には自信がある、と書いています。
それでも、一度に全員へは公開していません。Hashimoto氏は10月15日、X(旧Twitter)にこう投稿しました。
「先週はRexのベータ版に250人を招待しました。今週は約2,000人を招待し、さらに1,000人の招待を始めたところです。まだ5万人近くが待っています。安定していることを確かめながら、1回に招待する人数を増やしていきます。」
順番を待っている人からは「まだ招待が来ない」という声も出ていました。それでも進め方は変えず、250人、2,000人、1,000人と、様子を見ながら広げています。会社は、1か月以内に待っている全員へ招待を届けたいとしています。
方向は変えずに、進め方をその時に合わせる
この進め方で変わっていないのは、「良いツールを届ける」という方向です。一方で、何人に、いつ届けるかは、その週の安定の具合を見て決めています。
ここで大事なのは、「全員に公開する」というゴールの形にこだわっていない点です。最初から日付と人数を決めて、そのとおりに進めているわけではありません。今の状態を確かめ、大丈夫なら次は少し多く。その時の在り方で、一歩ずつ進めています。
できるのにまだ出さない、という判断は、待っている人にもどかしさを与えることがあります。けれども、少しずつ広げることで、問題が起きても早く気づいて直せます。結果として、使う人の信頼にもつながるのだと思います。
通所や作業も「少しずつ広げる」でいい
就労移行支援に通い始めた方からも、「早く週5日通えるようにしたい」「最初からたくさんの作業をこなしたい」という声を聞くことがあります。働きたいという方向を持っていることは、とても大切です。
ただ、最初から理想の形を目指すと、体調を崩して通えなくなることもあります。精神障害や発達障害のある方の場合、疲れが数日遅れて出ることも少なくありません。Rexの公開と同じように、少しずつ広げていく進め方が役に立ちます。
例:通所日数を少しずつ増やす

- 最初は週2〜3日から始める
- 2週間ほど様子を見て、体調や睡眠が安定していれば1日増やす
- 疲れが残るようなら、日数はそのままにして、もう少し様子を見る
例:作業量を少しずつ増やす
- 最初は1つの課題に集中し、終わるまでの時間や疲れ具合を記録する
- 慣れてきたら、課題の量や難しさを少し上げる
- 増やした後の数日の体調を見て、続けるか、元に戻すかを決める
大切なのは、増やすかどうかを「予定」ではなく、その時の「状態」で決めることです。予定どおりに進まない週があっても、向かう方向が変わったわけではありません。
一人で決めずに、相談しながら進める

自分の状態を自分だけで判断するのは、簡単ではありません。調子が良い日は「もっとできる」と感じ、つらい日は「全然だめだ」と感じやすいものです。
就労移行支援では、通所の記録や作業の様子をもとに、スタッフと一緒に次の一歩を考えられます。「今週は増やしてみる」「今は様子を見る」といった判断を、相談しながら決められます。
IFキャリアステーション荒川について
IFキャリアステーション荒川は、IT分野に特化した就労移行支援事業所です。精神障害や発達障害のある方を対象に、パソコンやITのスキルを身につけながら、働くための準備を進めています。
- 場所:西日暮里駅から徒歩5分
- プログラム:10時〜15時
「いきなり毎日は不安」「自分に合うペースが分からない」という方も、まずは見学や相談で、今の状態からどう始めるかを一緒に考えましょう。

